開発コンセプトを知ってラケット能力を100%解放
赤土の王者を支えるスピンテクノロジー
全仏オープン2020は、ナダル選手の前人未踏13度目のタイトル獲得で幕を閉じました。
メンタル、パワー、フットワーク…王者の持つ様々な素晴らしさが語られていますが、
ある専門誌では「赤土で強烈にバウンドするスピンボール」を指摘していました。
ナダル選手の代名詞とも言えるスピンショット。
当然、その手にはスピンに特化したバボラ社のラケット「ピュアアエロ」が握られています。
「スピンラケット」と言っても、当然誰もがスピンボールを打てるという虫のいい話はありません。
ただ、各社スピンラケットと称するものには「物理的にスピンがかかりやすくなるテクノロジー」が搭載されています。
今回のコラムではそれに注目。
スピンラケットのテクノロジーを理解して能力を発揮すれば、ナダル選手みたいなボールが打てる!?
スピンがかかるテクノロジーとは
HEADのスピンラケット「エクストリーム」のコラムでも解説しましたが、
ボールに回転を与えるのはフレームではなくストリング。
縦糸がズレて戻る「スナップバック」という現象によってスピンがかかるメカニズムが解明されました。
従って、各社スピンラケットには「縦糸が大きく動く工夫」がされています。
更に、スピンをかける場合ラケットを下から上方向に振るので、どうしてもボールの推進力が低下します。
それを補うため、「シャフト部分を太くしてラケットにパワー」を持たせています。
この、「縦糸の動き」と「シャフトのパワー」がスピンラケットには必須の要素なのです。
以下、各社のスピンラケットを個別に分析していきましょう。
バボラのピュアアエロ

ナダル選手使用モデルのスピンモンスターラケット。スロート部分は「アエロモジュラー3」というフレームで太くガッチリしていますが、
空気抵抗を減らすため三角形の形をしているのが特徴です。そして、フレーム上下のグロメットホールに注目すると、
縦糸6本分の穴が楕円形になっていて、左右にスライド(スナップバック)し易くなっているのです。(FSIスピン)
スピンラケットに必要な要素をバッチリおさえた王道モデルと言えるでしょう。
ナダルを支えるスピンラケット
新鮮な野菜を気軽に毎日

ダンロップのSX

こちらもシャフト部分は太くしっかりしています。ピュアアエロに似た三角形の形をしていますが、大きく違うのが溝が入っていること。
これによって「しなり」が生まれるのが大きな特徴です。ボールをパンッと弾くのではなく、一瞬グッと持って押す感覚というべきでしょうか。
打感に少し味付けを持たせています。
また、グロメットの穴にも特徴が。「スピンブーストテクノロジー」(上図)といって、
夫々の穴の形状に(計算し尽された)変化を持たせ、縦糸一本一本に適切な稼働制限を加えることで
「弾道補正機能」を持たせています。これによりもちろんスピンはかかるのですが、ネットやオーバーのミスを減らすというオマケ効果があるのです。
ど真ん中で捉え続けることが難しい速いボールに対して、
(ある程度)無造作にラケットを振ってもちゃんとコートにおさまって欲しいと思う方に向いたラケットと言えるでしょう。
しなるスピンラケット
洗いながら肌へも栄養

ウィルソンのSラケットシリーズ
スナップバック現象を発見したウィルソン社。こちらのラケットは「横糸を通常より減らすことで、縦糸を動きやすくする」という技術が搭載され、
「Sラケ」という名で、各シリーズに存在しています。(クラッシュ100S、ブレード98S、バーン100S…など)
とてもシンプルな発想のように感じますが、ただ横糸の本数を減らしましたというのではなく、
打感や耐久性、そしてパワーを損なうことがないよう、研究されたストリングパータンになっています。
データでも証明されたスピン効果
軽量タイプのSラケ
大切な家族の栄養に♪

その他のスピンラケットにも注目
HEADのスピンラケット「エクストリーム」についてはコラムをご覧ください。
やはり、縦糸とフレームに最新のテクノロジーが搭載されています。
ヨネックスはVcore(ブイコア)がありますが、こちらも縦糸を長く取るための独自のテクノロジー「ライナーテック」が搭載。
これは高品質カーボンでないと実現できない(フレームが折れてしまう)、メイドインジャパンの証の技術です。
まだまだ紹介すればキリがありません!ぜひ皆さんもお気に入りのメーカーのスピンラケットを手に取って注目してみてください。
きっと、回転というテクノロジーに注いだ技術者の想いを発見できると思います。
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